黄泉比良坂(よもつひらさか)
神話と共に暮らす島根では、古事記に記された神話の舞台が数多くあるので、普段見慣れた景色が神話の舞台になっていることがよくあります。
先日は打ち合わせの帰りに通りかかった、黄泉比良坂(よもつひらさか)へ寄ってみました。
黄泉比良坂は古事記にも書かれた、黄泉の国への入り口とされる場所です。
古事記に記されていることを簡単に紹介すると。
妻のイザナミに先立たれた夫のイザナギが、この世に連れ戻すために黄泉の国へ行きますが、イザナミはすでに黄泉の国の食べ物を口にしたためそのまま戻れず、「黄泉国の神に相談してくるので決して覗かないでください」と言い残して中に入りました。
長い時間が過ぎ、待ちきれなくなったイザナギが中を覗くと、全身にウジがわいたイザナミの死体があったので、恐ろしくなったイザナギは逃げ出すと、恥をかかされたイザナミは醜女とともに後を追いました。
現世と黄泉国との境に当たる「黄泉比良坂」で、イザナギが生えていた桃の実を投げて助かり、近くにあった巨岩で道を塞いでしまいます。
その岩をはさみ、イザナミは 「愛しいあなたが、このようなことをされるのならば、わたしは一日にあなたの国の人間たちを千人殺してあげましょう。」というと、
イザナギは 、「愛しい女神よ。あなたがそうするなら、わたしは、一日に千五百の産屋(うぶや=出産のために建てる家)を建てましょう。」とおっしゃいました。
こういうことから、人間は一日に千人が死に、千五百人が生まれてくるといわれています。
ひっそりとした場所ですが、古事記の中でも印象に残る名シーンの舞台です。