TPP交渉参加問題について想う
1月30日に安倍首相が衆議院本会議で行われた各党の代表質問で、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題について、衆議院選挙での公約の通り、『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉には参加しない。参加した場合に生じる影響などを精査・分析したうえで、国益にかなう最善の道を求めていきたい」と述べられました。
ところで、ご存知方も多いと思いますが、日本の国土は3800万haで、その3分の2(2500万ha)を森林が占めており、日本は森林率(森林面積÷国土面積)世界3位の森林大国であります。
しかし、かつては90%以上もあった木材の自給率は、木材輸入が完全自由化になった1964年頃から急激に下がり始め、1973年に変動相場制へ移行してから現在までの約50年間で一時は20%まで落ち込みました。
その背景として、戦後の復興で木材需要が急増し需要に追いつかなくなり、価格が急騰した国産材に比べ安価で安定供給できる外材の需要が増え、その後の円高によって一気にシェアを伸ばしたことと、政策として建築物の非木造化を進めたことが挙げられます。
現在、木材自給率50%を目標に様々な施策が進められ、その代表的なものとして平成21年から「森林整備加速化・林業再生事業費補助金」の制度がスタートしたことや、「公共建築物木材利用促進法」が施行され、一時は20%まで落ち込んだ自給率が27%まで持ち直してきています。
弊社も2年前に、この制度を使って木材加工機械を設備させていただきました。
僕は自由貿易には賛成ですが、TPPについては全ての品目の関税を無条件で撤廃することには賛成できませんし、参加する前にしっかりとセーフティーネットを整備するべきと思います。
それと、1月28日の某経済新聞の記事で、「林野庁が震災復興で東北では20~30万戸の住宅が全半壊しており、建て直すのに600万~700万立方mの国産材が必要になると増産を促した。」という事について「1400億円もあれば被災地が必要とする外材を買って全部無料で配ればほぼ足りる。」と書かれていました。
これは、復興予算の使い道について書かれた記事でしたが、この記事の暴論には違和感を覚えずにはいられませんでした。
現在、日本中の中山間地域で限界集落化や集落そのものが消失してしまう状況が起きていますが、これは人口減少の問題だけでなく、手入れをする価値の無くなった山林が放置され、次世代の担い手に引き継ぐことが出来なくなったことが一因としてあります。
経済規模でいえば、国内林業の産出額4200億円の内、国産材の産出額は1900億円と決して大きな業界ではありませんが、Co2やバイオマスなども含んだ森林多面的価値は70兆円ともいわれていますし、山林に価値を見出しそこに情熱を注ぐ人も増えていると感じています。
そんな人と出会う機会が、最近とても多くなりました。
今日で1月も終わりですね。
工場には今日も沢山の地松丸太が入荷しています。
寒伐り松の製材にこだわり、乾燥方法にこだわり、国産松が持つ本来の価値を最大限に引き出す。
時流に惑わされず、本物を提供し続けることが今の弊社のやるべきことと、改めて気持ちが引き締まりました。