竹下木材

WOODS OF SHIMANE

島根の木

その他

杉(スギ)

スギは、日本固有の植物で、古くから材木用として広く植栽されている木です。1993年、世界遺産に指定された鹿児島県屋久島に生息する屋久杉は世界的にも有名で、一般的には樹齢1000年以上のものを屋久杉と呼び、それ以下は小杉と呼ばれます。
スギの平均的寿命は500年余とされていますが、屋久杉には推定2000年を超える巨木が多数存在します。中でも推定樹齢7200年とされる縄文杉もあり、これが事実であるならば、世界一長寿の樹木といえます。
国立公園三瓶山(島根県大田市三瓶町)では1982年に縄文時代の埋没林が発見されました。 三瓶山の北麓(大田市三瓶町多根)にある三瓶小豆原埋没林は縄文時代後期の三瓶火山の噴火活動によって埋没した巨木の林です。巨大な幹が直立状態で多数発見されていることが最大の特徴であり、この埋没立木の大半がスギでした。

三瓶山の周辺では地中に巨木があることは昔から知られており、「埋もれ杉」とか「神代杉」などと呼ばれていたそうです。2000年4月には出雲大社(島根県出雲市大社町)で平安時代の本殿の巨大な柱が発見されました。古代出雲大社の本殿は48メートルもの高さを有していたという伝承が残っていますが、それが事実かもしれないと思わせるような巨大な柱です。出雲大社の例をはじめ、古くは縄文時代の丸木舟などスギはいろいろな形で利用されてきましたが、この埋没林の発見によって、標高200メートルの比較的低所にスギの巨木林が存在したことが明らかになり、スギ文化の背景を探る手がかりが得られたようです。
また、弥生時代の登呂遺跡の水田跡からは、あぜ道に使われたおびただしい数のスギの矢板が発見されているように、日本人とスギとの関わりは極めて深いといえます。西欧の「石の文化」に対して、「木材文化」といわれる日本の文化を支えてきた有力な樹種といえるでしょう。

スギの建築材としての特徴

辺材(しらた)は白色、心材(あかみ)は淡紅色ないしは暗赤褐色です。年輪が明瞭で肌目はやや粗く、特有のにおいがあります。材は、樹幹内の一夜生長経過にもよりますが、比較的軽軟で加工は容易です。スギは柱や板材の他にも磨き丸太や床材など多様な材に育てられます。特に茶室や数寄屋造りの床の間などに用いられる磨き丸太は幼木の頃から下枝を枝打ちして無節(むぶし)であり、上下でできる限り同じ太さであるように育てられます。葉量が少ないため生長には長い年月が必要である上、労力も大変なものなのでこのような材は大変高価になります。
建築用材(柱、造作材、母屋、たる木、ぬき、各種下地材等)としては一般的ですが、その他和風建具(ふすま、障子等)、船舶、電柱、土木、仮設(足場丸太、切り丸太等)の諸用途にも用いられます。特殊なものとしては、天然スギの天井材や北山杉の磨き丸太等があります。

名称

スギ(杉)

学術名

Cryptomeria japonica(Linnaeus.)D.Don(クリプトメリア ヤポニカ〈ジャポニカ〉)

英語名

Japanese Cedar

スギ科スギ属裸子植物、雌雄同株の針葉樹。

分布

本州から四国、九州の屋久島に掛けて分布しており、植林によって国内でも広範囲に見ることができます。太平洋側から四国、九州に分布するものをオモテスギ(表杉)、日本海側から北陸・山陰地方に分布するものをウラスギ(裏杉)と呼び、葉の硬さなどにやや違いがあり、環境によって形態の相違があります。

大きさ

樹高は30~40メートル、巨大なものは60メートル以上にもなります。
直径は2メートル程度まで生長する優良材です。

花期

3~4月に花が咲き雌花は5ミリ前後で枝先に下向きに付き目立ちません。雄花は小枝の先に固まって付き、春先には花粉を撒き散らして花粉症の原因となります。近年はこの花粉アレルギーが社会問題となっており、花粉生産数の少ない品種が開発されつつあります。実は球形で直径は15~25ミリ、緑色から茶色に変わります。

環境

ヒノキに比べて水分を好むので、谷沿いなどの適潤地からやや過湿な立地に植栽されることが多いようです。自然状態では、湿原の周辺にも生育しており、水質に強い抵抗力を持っています。

名前の由来

スギの語源には諸説がありますが、スギはすくすく生えるという「直木(すぐき:まっすぐな木)」という説が有力です。真っ直ぐに天に向かってそそり立つ気高いイメージや、生命力が強く長寿であることから神木や霊木として信仰の対象ともなっています。
右の写真は縁結びの神様が祭られている八重垣神社(島根県松江市佐草町)の奥の院にあるスギの木です。ここは、神話の世界では「佐久佐女(さくさめ)の森」と呼ばれていたところで原生林がそのまま息づいているような静かな森です。

特徴

国産樹種の中では高さ、寿命ともに第一位の座を示しています。耐陰性があり、日陰地や屋内での利用価値が大きいのですが、荒廃した山林から発生する花粉による花粉症のイメージが強く、最近のガーデニングではあまり注目されていません。スギは日本国内の環境にあっていて需要もあることから、肥培管理を行って荒廃させなければ大量の花粉を発生することはほとんどありません。多くの園芸や造林用の品種が研究・作出されているのが現状です。
用途としては、公園樹、街路樹、社寺林、盆栽、建築用材、建具等の他、生活用材として家具調度、経木、割箸、酒樽等に広く利用されています。
右上の写真は、諏訪神社(島根県邑南町)の千年杉の並木です。参道の両脇にスギの巨木が21本も建ち並んでおり、最も大きなもので幹周が5メートル、高さが30メートルを超えます。大地から太い根が力強く盛り上がっている様は荘厳なもので、中には2本の杉の木の根元が融合しているものも数本見られます。樹齢が1000年を超えるスギの巨木が同じ場所に20本以上もあるというのは島根県内でも非常に珍しく、昭和44年に県の天然記念物に指定されました。

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